マムシグサ
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子どもの頃食べられなかった物が、大人になって好物になることがある。シイタケなんかは大人の味だと思う。これとは反対に、子どもの頃は平気だったヌルヌルニョロニョロが、最近はめっきりダメになった。ヘビはもう頂けない。いわんやマムシおやである。この有り難くないヘビの名前を頂戴している妙な植物がある。
3月になると屋久島の中腹では、マムシグサの花が咲き始める。荒川林道の脇などによく群生しているのを見かける。筒の上に三角形の蓋をかぶせたような花の形が、ちょうどマムシが鎌首をもたげたように見えるということで、この名前がついたらしい。
そもそもこの花は、花粉の受け渡しを、蝶や蜂ではなく、蝿に頼っているという。腐臭を漂わせ筒状をした花の中へ蝿を誘い込む。雄花には筒の下に出口があるが、雌花は硬く出口を閉ざし、一度迷い込んだ蝿は、2度と外へは出られない仕組みになっているらしい。マムシの執念深さというか、女の業の深さを感ぜずにはいられない。
またこのマムシグサは、性転換することでも有名である。もともとコンニャクの仲間で、地下にイモ
を作り養分を蓄えているのだが、前の年にぬくぬくと育って、大きなイモをつくることができれば、雌
になる。一方、何かの弾みでいじけたイモしかつくれなければ雄になる。どこの世界でも女性はたくましいのである。
[市川]
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Ynac通信1号掲載
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