草片石(クサビライシ)
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「草片石」と書かいて「クサビライシ」と読める人がどれくらいいるだろう。これがはたまた海にいる生物、サンゴの仲間だとしっている人と言えばどうだろう。こんな名前をつけた海洋生物学者がいたことに驚いてしまう。「草片」とは、古語でキノコ類の総称として使われていた。これが又この「クサビライシ」の生態に何ともぴったりの名前だけにすばらしい。
クサビライシはサンゴの中ではちょっと変わった生態を持っている。普通のサンゴは、岩盤にくっついていて(固着)共同生活(群体)をしている。それに対して、このクサビライシは、1匹で岩盤にくっついていない。これを「群体固着型サンゴ」に対して、「単体自由形サンゴ」と呼んでいる。大きさはちょうどあんパンかメロンパンぐらいの大きさ。そんなのが海底にごろごろ転がっているのだ。
転がっているのであまり波の強い外洋にはいない。元浦や津森などの入り江になったところにいる。ひっくり返るとこの石ころのようなものが自分で元に戻ると言うが、どうも私は信じ難いのだが。
このクサビライシは、他のサンゴと違っていつも自由気ままに生きているのかと言うとそうではなく、幼生期を終えると他のサンゴ同様、ほんの一時期だけ固着生活を送る。この時期のクサビライシを見つけたとき、この「草片石」の名前になるほどと感心してしまったのである。まさしく、キノコそっくりなのだ。
クサビライシの分布域は奄美大島以南となっており、もしかしたら屋久島が分布の北限となるかもしれない。その割りには、あるところにはゴロゴロ転がっているのには驚く。また、クサビライシの仲間は、ちゃんと調べたわけではないが、見た感じでクサビライシ、マルクサビライシ、イシナマコ、キュウリイシと何種類かあるようである。
屋久島の海に潜ってクサビライシを見つけたら、是非固着生活を送っているクサビライシを見つけていただきたい。(松本)
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Ynac通信6,7合併号掲載
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