屋久島の謎
白谷雲水峡の片口
1999年8月某日、白谷雲水峡の原生林歩道沿いの苔のマットの上に、謎の片口が置かれていた。底が抜けていたので、実用品が置き忘れられたものとは考えられない。何者かが、何らかの目的を持って、置いていったものと考えられる。 これに先立つこと数日前、東京から来たS姉妹が、白谷雲水峡を訪れた際に、白谷山荘近くで、謎の4人組に遭遇した。 辻峠方面から下りてきたずぶぬれの4人組の先頭は、浮浪者風の男、2番目はヤマンバ風の女、3番目はアラブ風の色黒の男、4番目はアフガン帽を被ったパキスタン風の男だったそうな。 このうち3番目のアラブ風の男が、枯れ葉にまみれた壷を持っていた。 S姉(背が低い)が、恐る恐る中を覗こうとしたところ、アラブ風の男がさっと壷を高く掲げて、中身を隠した。 めちゃめちゃびびっているにもかかわらず、好奇心を押さえきれないS姉は、震える声で尋ねた。 「何入ってんの〜?」 3番目の男は、アラブっぽい目でギロッとS姉妹を見たが、何も答えず通りすぎた。 すると最後のアフガン帽の男が、低音を押し殺したような声で言った。 「た・か・ら・も・の!」 4人組は、中身を隠したまま去っていった。 その後のS姉妹は、恐怖で苔の森どころではなかったとか。 この片口と、4人組の関係は定かではないが、時期的にぴたりと一致することから、ひょっとするとこの片口も謎の4人組の「た・か・ら・も・の!」の一つなのかもしれない。 何の目的でここに置かれたものなのか、またいったい何が宝物なのか、謎を残したまま片口も4人組も、消えてしまった。 |